大学医学部6年の勉強を終えて医師国家試験に合格すると研修医となる。2年間、希望の研修先で、医師の実地指導を受ける。無給であったこともあったが、給与も当然ながら支給される。希望の多い東京中心の病院は安く、希望の少ない医師不足の地方の方が高い。
女医の卵であるIさんは、この4月から富山大学病院で研修医として励んでいる。彼女は総合医療科を目指しており、研修先を選ぶにあたって、ナラティブホームを訪ねて、佐藤理事長からアドバイスを得ていた。ひょんなことから再会することができた。
ちょっぴり疲労感がにじむ。それも当然で、この4月から休んだのは1日だけ、朝6時過ぎから10時過ぎまで働き、泊まり勤務もある。呼び出しがあるため、携帯は睡眠時も枕元に置いている。また、あの処理は間違いなかったのだろうか、と夜中にふと思いつくこともあり、そのまま病院に駆けつけたこともある。まったく気がぬけない。その上に、彼女には4年生の男の子がいる。母上に世話をしてもらっているが、多感な時期ゆえにその面でも気が抜けず、時間をやり繰りしてはスキンシップを欠かさないことにしている。医師が1人前になるには10年必要、というのが佐藤理事長。まして、総合医療は経験がものをいう。彼女には、まだまだ大変な苦労が待っているということになる。
日本の医療は彼女みたいな犠牲のうえに成り立っている。素直に「頑張ってね」とはいえなかった。