実はさる福祉士養成校に求人票を掲示している。夜間勤務もあり厳しいですよ、といわれていたので、問い合わせがあればもうけものという気持ちだったが、予想通り全く反応がない。そんな思いのところに、県内の介護福祉士養成校4校の定員割れ報道である。全体で定員250人だが、何と190人しか入学せず、大きく定員を割り込んでいるという。「きつい」「低賃金」という介護職離れという現実を、今更ながら見せつけられた。
原因の大きなものは介護保険の持つ矛盾である。身体介護にしても、生活援助にしても公定価格と決まっている。真意は定かでないが、主婦の家事労働から算定され、単身者が生計をぎりぎり維持できる水準である。その人の能力に全く関係がない。おまけに感情労働といわれる「いつも笑顔で」「優しく親切に」「決して怒ってはならない」「何を言われても言い返してはならない」だ。無体なほどまでの感情抑制が求められる。同じ感情労働者であるフライトアテンダント、バーのホステスと較べても、明らかに低いことは間違いない。
なぜ、人間の生命を維持し、その死をみとるという労働が、その他の労働の下位におかれるのか。社会学者の上野千鶴子はジェンダー(女性差別)が深く関与すると指摘する。ケアは女の仕事、女なら誰でもできる非熟練労働、それだから既婚女性など供給源は無尽蔵という図式だ。労働条件が改善するためには、この図式構造が壊れる必要があるとする。
しかし、待ったなしで要介護者が激増している。現場だけの努力では限界があることは確か。当事者の片隅にいるのだが、当面知恵と才覚でどう乗り切るかだが、それでも早晩壁にぶち当たることは間違いない。あなたならどうする。(K)