病院のイメージを変えなければならない。元通りに治すというより、多少治らなくても一定の生活が出来る状態にする治療という感じで、徹底して病気と闘うのだというものではない。病気と一緒に生活も楽しんでいこうということ。だから入院する時から、いやもっと早く通院する時から、退院を考えておかなければならない。退院をスムースにおこなえるかどうかが病院経営の重要なポイントになろうとしている。
8月11日、退院調整看護師の草分けである宇都宮宏子さんを招いて、砺波市散居村ミュージアムで講演会を行った。ナラティブホームの主催だが、これにはちょっと裏がある。現在の経営レベルではまだ社会貢献というわけにはいかない。厚生労働省が在宅医療連携拠点として予算を出してくれたのである。
退院調整看護師と聞き慣れない職種だが、退院のキーマンである。この宇都宮宏子さんの話し方が実にうまい。格好のテーマということで100人を超える医師、看護師、ケアマネージャーさんたちが駈けつけてくれたが、全員が引き込まれていった。在宅療養の伝道師といわれているが間違いない。患者の思い、家族の思いを身近に把握できるのは看護師であり、治療モデルから生活モデルへ、わかりやすく伝えられるのも看護師である。それもありきたりの取ってつけた説得ではなく、関係者からいろんな話を聞き、それなら在宅で頑張ってやれそうだと思わせる説得力が求められる。家で過ごす患者の表情は豊かだし、ケア後に起き上がり、自分で食べられるようになる姿を見て、看護の力で生活の質が上がったと実感できるのだから、これほど働きがいの感じられる仕事はない。その熱弁に会場のみんながなるほどと思う。
「入院は、生活者がたまたま病院にいるだけ。患者の管理ではなく、患者の視点を持てる看護師になってほしい。また患者のためにいろいろな多職種がもっともっとコミュニケーションを図らなければならない」。
病院で死ぬ時代は終わる、というより、終わらざるを得ない。団塊世代が死を迎える時代に早晩突入すると、年間の死亡数がピークで170万人と5割増える。病院のベッドではおさまらないのだ。(K)