介護保険がスタートしたのは2000年。介護を家族ではなく、社会で担うという大転換で、その期待は大きかった。高齢化社会に立ち向かう切り札ともいわれたが、それから12年が過ぎ、3年に1度の介護報酬改定が続き、今年が4回目だ。1月25日に発表されたのだが、施設介護から在宅介護への誘導がはっきりしてきた。
しかし、利用者(要介護者)も、介護事業者も腑に落ちないことが多い。膨れ上がる予算を必死に抑制しようという意図が、介護保険の最初の理念を捻じ曲げようとしているように見えるからだ。24時間地域巡回型サービスといっても、そんな人材がすぐに確保できるわけがない。老人保健施設は自立支援を促すものであるから、在宅に戻した率に応じて報酬を高くするというが、重度化した人しか入居していないのが実状で、今更自宅に戻せない。実現不可能な施策を、報酬改定で政策を誘導していく手法は、もう通じなくなっているといっていい。
大阪大学学長であった哲学者の鷲田清一氏の指摘だが、「ケアを開く」という視点である。そこに立ち返って論じてもいいのではないだろうか。介護保険の基準とか、認可とかで、介護を「世話」であったものを「業務」にして専門職に任せるという事で、やせ細らせているという。人が人の世話をするのは、大抵の場合他の仕事をやりながらするのが、普通のかたちだった。それが保険でやるからといって、規制にがんじがらめにされて、普通の人が世話をしてはいけないということで、追い出されてしまっている。この大きな矛盾にもっと立ち返ってもいいのではないか、というもの。お世話ということなら、地域の出番である。介護を地域で行うとすれば、どうしたらいいのか。介護保険を地域に任せる視点、任せて大丈夫という地域づくりが問われている。(K)