南国・宮崎県宮崎市の話である。近所の民家を借り上げて、看取りの家に仕立てあげた。有料老人ホームとか、サービス付き高齢者住宅とかではなく、いわば下宿人をおくという感じである。「かあさんの家」と呼んで、それが現在4軒となっている。7年間で38人を看取っているのだが、リーダーの市原美穂さんは必要にせまれてやってきたこと。基準とか制度を待っていたら、とてもできなかったろう。また行政もグレー部分には明確に指示しません。むしろ、後向きのアドバイスとなります。待ったなしでやるしかないのです。
政策が急激に病院、施設から在宅へと舵を切りながら、その受け皿をまったく用意していないことが問題であり、これをいけないというなら、誰が、どこが、引き受けるのかと意に介さない。ほぼ5人を定員にして、介護スタッフ5~6人が365日24時間見守る。「かあさんの家」のいいところは、身動きする物音や小さな呼び声、寝息、匂いを感じとりながら、それを察してケアができること。もちろん在宅医、訪問看護師などが随時入ってサポートをしてくれる。みんな外付けだから、誰でも、どこでもできるのだ。
「ご遺体がどういう状態であるかが、介護者の通信簿です」と妙に記憶に残る。これを持続可能なシステムにしていくのがポイントで、家賃や食事で85,000円、その他生活支援費で4万~6万円、その他に医療費、介護費の自己負担が加わることになる。これが限界であり、収支はトントンで、営利事業としてはまったく成り立たないという。「かあさんの家のつくり方」という本を出版して、いろんな地域で挑戦してほしいと呼びかけている。お会いしたのは東京で行われたケアワーカー集会だったが、47年生まれというのに溌剌40代に見えた。(K)