医療介護を受ける人と与える人。こんな固定的な観念を打ち破る思想が、オランダで語られ、実行されている。それはこんなイメージである。患者が飛行機のパイロットとなる。この患者は自分の病気、心理などをコントロールするやり方を熟知している。医師や、看護介護士は安全な飛行機ををつくり、ともにフライトプランを立て、パイロットに必要なサポートを提供する。全員が、パイロットが今後どうなるか、先を見越したものを予測しながら働く多職種チームとうことになる。これがこれから目指す先進的な在宅ケアだ。
今回の講師は堀田聡子・労働政策研究研修機構研究員で、若くて颯爽としている。人事管理が専門で、オランダのケア統合組織「ビュートゾルフ」に注目、現地で学んで、これを日本にも伝えたいとする伝道師を任じているように見える。
ビュートゾルフは1チーム12人までの看護介護士で構成され、上下関係がないフラットな組織で、一人ひとりがリーダーとして裁量権を持ち、相応の責任を負っている。そしてあらゆるタイプの利用者に対してトータルケアを提供していく。看護介護士の専門性が、利用者の力を引き出し、満足感にもつながることを想定した組織である。オランダでは人口1670万人に対して、ビュートゾルフ500チームが活き活きと活動している。
このビュートゾルフを2006年に起業したのが地域看護師のヨス・デ・ブロックさん。巨大組織となって、息が詰まりそうな形式だけを尊重する官僚組織から自律型の小さなチームヘ。患者と専門職の関係を基盤として、共にどんな解決策があるかを探っていく組織に変えたのである。ひとりの勇気ある挑戦が国の政策を堂々と変えつつあるというのだから凄い。日本でもこの考え方に共鳴して、やってやろうという人が増えているという。志のある看護師、介護士よ、立ち上がれ!といって、一挙に変わるわけもないが、この動きを止める側にはならないでほしい。(K)