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福井・オレンジホームケアクリニック訪問記

 閉じこもっていると、視野がどんどん狭くなる。「田舎の学問より京の昼寝」というが、これは正しいと思う。というわけで、我々より1年遅れて開業した福井のオレンジホームを訪ねた。

 在宅医療専門で、外来はやっていない。福井駅から車で5分ぐらいの街中の2階建てを借りて、1階は駐車場で、2階がワンフロアぶち抜きのオフィス。入った感じがデザインルームのように感じた。医療福祉という気がしない。これが在宅といえば、そういえる。真ん中の大きなテーブルを囲んでのミーティング中で、緊張感が漂っている。スタッフは医師が4名で、紅谷代表、女医さん、研修医2人の構成。看護師は7名。SW(ソウシアルワーカー)が3名。メディカルクラークと呼んでいる事務が5名。そして何とプロデューサーと称する専務か常務にあたる人がいて合計20名。みんな若い、そしてITに強そうという印象である。

 福井市内中心に約200人がここの在宅を利用している。全員が利用者の情報を共有して、誰が電話に出ても、対応ができる体制となっている。ここのプロデューサー氏が医療福祉とは無縁のIT、営業などのキャリアの持ち主で、ここの開業に駆け参じ、全体をまとめている。確かにフットワークがよさそうで、構えている専務、常務ではない。何度も指摘しているが、この業界はいろんな人材がはいってきて、改革をしていかないとうまくいかない。彼の場合は独自ソフトを開発して、例えばカルテ入力なんかで効率化を図っているし、女性が働き易いように労働条件なども柔軟な運用とし、職場環境なども改善を図っている。すべてがうまくいっているわけではないが、試行錯誤を繰り返しながら、とにかく前に進もうという気概が見て取れる。

 結論めいた感想だが、女性の能力を最大限に活用するシステムを改善し続けること、加えてコンピュータ技術を駆使してコミュニケーション能力を高めることが決め手になるような気がした。もちろんその前に、人間らしい豊かな感性を磨くことが最も大切なことはいわずもなが、である。(K)


「毎日がアルツハイマー」

 これは映画の題名で、劇場で立ち見が出るほどの人気らしい。82歳でアルツハイマー病と診断された母親を、娘が映画監督となって映画に仕立て上げた。家族をさらけ出している。視点を変えると、それほど悲劇的ではなく、むしろ明るく、こっけいで、何か楽しんでいるのではないか、と思えてくる。
 この母親はいわゆる良妻賢母で、世間体を気にしてばかりの真面目な人だった。すごい掃除魔で「家が汚される」と怒るので、友達も家に連れて来られなかった。ところが病気になってそうした“壁”や“仮面”がごっそり落ちて、「今、ストレスがないんだ」「こんなラクなことはない」「今までの私はなんだったんだろう」というようになった。アルツハイマーになって、本人が解放されている。娘の監督はそれをカメラに収めている。
 この娘監督は、母の理想の娘像を踏みにじるようにオーストラリアへ行ったきり29年間も帰ってこなかった。現地の人と結婚し、子供ひとりをもうけて離婚までしている。これまでわがまま自由にさせてもらったのだから、これぐらいの介護は恩返しと思っている。ここがポイントで、自分を容認できていない人は、他人を容認することもできない。一番辛いのは誰か、といえば介護される側。そう思えるかどうか、だという。そうした意味では、介護というのは自分の問題で、自分が試されているのだともいい切る。「毎日がアルツハイマー」をできれば見てほしい。
 現在の認知症患者数は307万人。これからもどんどん増えることは間違いない。厚労省は「認知症になっても本人の意思が尊重され、できるかぎり住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会」を目指すという。つまり「在宅」「地域」がキーワードとなっている。果たしてどうか。しかし待ったなしでやってくる。文句をいってみても、どうもあなた任せにはできない空気だ。もう立ち上がって、大声を出してでも受け入れていくしかない。新年早々ながら、覚悟が必要ですぞ!(K)
 


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