刑務所の中のレストラン

 社員食堂の話題から、こんな話が舞い込んできた。ロンドン郊外にあるハイダウン刑務所の中にレストランがあるという。2009年にオープンの「ザ・クリンク」。フォークとナイフはプラスチック製で凶器にならないように配慮され、入れ墨、ドレッドヘアの男達が接客し、厨房では不慣れな手つきで鍋を振るっている。

麻薬売買などで収監された約1,100人の受刑者が服役しているが、出所してもすぐに戻ってくることで頭を痛めていた。劣悪な家庭環境と教育、そして貧困。すぐに社会からはじかれてしまう。これを何とかしたいと思い立ったのがシェフの育成プロジェクト。全英の富裕層に呼びかけ、8000万円以上の寄付が集り、スタートした。

五つ星レストランに合格できるシェフを育てようと、刑期1年以上の受刑者を選抜し、レストランで使う家具、野菜も敷地内で作っている。とにかく時間がたっぷりあるので、教育のしがいがあるというもの。座学は苦手だが、手を動かすことや感覚はとてもいい、加えて集中力もあるということで、隠れた才能がうごめき、めきめきと上達する者が多い。

そんなことで、とてもおいしく、評判が評判を呼んだ。そして、今年の外食部門のオスカー賞にノミネートされているという。

その結論だが、食堂経営を刑務所に任せたらどうか、という話だった。スタッフの反応は「? ? ?」。