ナラティブホームは、人生の最終章を支えるためにある。最終章というのは、人生の決算が見える時でもある。幸せだったのか、不幸せだったのか、本人もそうだが、家族もそれぞれに思いを巡らす。しかし、ものの見方というのは、それぞれに違うということもある。精神科医で、ホスピス医でもある柏木哲夫さんはこんなエッセイを書いている。
多くの「人生の実力者」に会ってきた。「人生の実力」というのは、「どのような状況におかれても、その状況を幸せに思える力」だ。物事が順調に進んでいる時には、人の底力は見えにくい。つらい、悲しい、やるせない状況、すなわち自分にとって不都合な状況になった時、どのような態度でその状況に対処できるか。そこで、その人の「人生の実力」が決まる。その中に,生きている証しを見ることができ、その状況を幸せと思えるかどうかでその人の実力が決まる。人生の達人はその実力を持っている。幸せからは程遠い人生の終わりの時であっても「幸せな人生でした」といえるかどうか、だ。
というものだが、願わくば死の床にあって、「みんな、ありがとう」と微笑んで、逝きたいものである。