ものがたりスタッフBlog

TOP > ものがたりスタッフBlog

人生の実力とは?

ナラティブホームは、人生の最終章を支えるためにある。

最終章というのは、人生の決算が見える時でもある。

幸せだったのか、不幸せだったのか、本人もそうだが、家族もそれぞれに思いを巡らす。

 

しかし、ものの見方というのは、それぞれに違うということもある。

精神科医で、ホスピス医でもある柏木哲夫さんはこんなエッセイを書いている。

 

多くの「人生の実力者」に会ってきた。

「人生の実力」というのは、「どのような状況におかれても、その状況を幸せに思える力」だ。

物事が順調に進んでいる時には、人の底力は見えにくい。

つらい、悲しい、やるせない状況、すなわち自分にとって不都合な状況になった時、どのような態度でその状況に対処できるか。

そこで、その人の「人生の実力」が決まる。

その中に,生きている証しを見ることができ、その状況を幸せと思えるかどうかでその人の実力が決まる。

 

人生の達人はその実力を持っている。

幸せからは程遠い人生の終わりの時であっても「幸せな人生でした」といえるかどうか、だ。

 

というものだが、願わくば死の床にあって、「みんな、ありがとう」と微笑んで、逝きたいものである。

 

 

大切な「命」「いのち」を守ります。
ものがたり診療所についてのご質問・お問合せは…

こちらから→


老少不定

  塩爺があれよ、あれよという間に逝ってしまった。玄関でばったり会って、お茶でも飲もうと2階の食堂に誘ったのが1週間前。疲れた表情ながら、2階の食堂まで階段で登れないとエレベーターを使ったが、缶入りの日本茶を啜って、大阪の話をした。塩爺が戦後起こしたスーパーは、業態を代えながら生き延びて、息子が阪急地下食堂街に出店している。百貨店の地下売場は多くの人で賑わうが、変化、競争が激しく毎日が勝負という職場で気が抜けない。百貨店の要求もきついと、いつの間に経営者の顔になっていた。この5月から大阪駅に伊勢丹が店を構え、大きく変貌しているので、1回見にいかんといきまへんな、と喋ったところであった。

 命のはかなさ、といえばそれまでだが、病床にある愛妻を遺して、先に逝ってしまったのである。愛妻を介護し、最後は自分が看取ってやらねば、と思っていたのが、逆転したのである。思い残すことが多かったと思う。

 波乱に富んだ人生は塩爺を強くしたが、自分の店を存続させたい思いは、ついつい継承した息子への強い期待と愛情となっていった。男尊女卑という偏見の罠である。娘さんはやはりおもしろくない。そんな場面もあり、心配したが、その確執も今となれば、すーっと氷解したようだ。

 標題は「ろうしょう・ふじょう」と読む。老いているから先に逝くとは限らない、年若いからと後に残る、とは限らない。命のはかなさを指している。いのち、不定なのである。


研修医

大学医学部6年の勉強を終えて医師国家試験に合格すると研修医となる。
2年間、希望の研修先で、医師の実地指導を受ける。
無給であったこともあったが、給与も当然ながら支給される。

希望の多い東京中心の病院は安く、希望の少ない医師不足の地方の方が高い。
女医の卵であるIさんは、この4月から富山大学病院で研修医として励んでいる。
彼女は総合医療科を目指しており、研修先を選ぶにあたって、ナラティブホームを訪ねて、佐藤理事長からアドバイスを得ていた。

ひょんなことから再会することができた。
ちょっぴり疲労感がにじむ。
それも当然で、この4月から休んだのは1日だけ、朝6時過ぎから10時過ぎまで働き、泊まり勤務もある。
呼び出しがあるため、携帯は睡眠時も枕元に置いている。
また、あの処理は間違いなかったのだろうか、と夜中にふと思いつくこともあり、そのまま病院に駆けつけたこともある。
まったく気がぬけない。
その上に、彼女には4年生の男の子がいる。
母上に世話をしてもらっているが、多感な時期ゆえにその面でも気が抜けず、時間をやり繰りしてはスキンシップを欠かさないことにしている。

医師が1人前になるには10年必要、というのが佐藤理事長。
まして、総合医療は経験がものをいう。
彼女には、まだまだ大変な苦労が待っているということになる。
日本の医療は彼女みたいな犠牲のうえに成り立っている。
素直に「頑張ってね」とはいえなかった。

大切な「命」「いのち」を守ります。
ものがたり診療所についてのご質問・お問合せは…

こちらから→


限界集落

 「分け入っても分け入っても青い山」。俳人・種田山頭火がボロの僧衣姿で、汗を拭きながら山道を歩いた時に、ふと思い浮かんだという名句である。そんな表現がぴったりするところに砺波・栴檀山農村集落センターがある。7月16日そこに出張して特定健診を行なった。受診者は12人、平均年齢80歳は超えている。ほとんどが顔見知りで、あいさつに始まって、おしゃべりが尽きない。「あれー、保険証忘れてきた」といえば、振興会長が車で取りにいってくれる。正午に到着する巡回バスでやってくる人が最後で、帰りはこれも会長さんが送るという。これほどあたたかい健診風景は全国でも珍しいと思う。

187世帯、人口500人だが、半数が65歳以上で限界集落とされるが、ここ栴檀山では75歳以上が150人を占める。しかし、見るからに健康である。腰をかがめながらも畑作業は日々欠かさないし、地産地消を地でいく食事は、生活習慣病とは無縁といっていい。医者要らず、と医者の前でいうのだから、苦笑するしかない。一人当たりの医療費は群を抜いて低い。

過去帳を見ると江戸中期に開墾の為に入植しているという振興会長は「10年で半減し、20年後には消滅するしかないと思っていますが、それでもここで頑張るしかないし、これほどいいところはありません」と、顔はすずやかだ。日本の山間地はどこも同様な状態にあることは間違いない。

ものがたり診療所庄東は、この栴檀山、栴檀野、般若、東般若の庄東4地区からの強い要望で4月にオープンした。新しい地域医療のモデル地区を目指すものだが、“医者要らず”の理想的なピンピンコロリがあってもいいと思う。


刑務所の中のレストラン

 社員食堂の話題から、こんな話が舞い込んできた。ロンドン郊外にあるハイダウン刑務所の中にレストランがあるという。2009年にオープンの「ザ・クリンク」。フォークとナイフはプラスチック製で凶器にならないように配慮され、入れ墨、ドレッドヘアの男達が接客し、厨房では不慣れな手つきで鍋を振るっている。

麻薬売買などで収監された約1,100人の受刑者が服役しているが、出所してもすぐに戻ってくることで頭を痛めていた。劣悪な家庭環境と教育、そして貧困。すぐに社会からはじかれてしまう。これを何とかしたいと思い立ったのがシェフの育成プロジェクト。全英の富裕層に呼びかけ、8000万円以上の寄付が集り、スタートした。

五つ星レストランに合格できるシェフを育てようと、刑期1年以上の受刑者を選抜し、レストランで使う家具、野菜も敷地内で作っている。とにかく時間がたっぷりあるので、教育のしがいがあるというもの。座学は苦手だが、手を動かすことや感覚はとてもいい、加えて集中力もあるということで、隠れた才能がうごめき、めきめきと上達する者が多い。

そんなことで、とてもおいしく、評判が評判を呼んだ。そして、今年の外食部門のオスカー賞にノミネートされているという。

その結論だが、食堂経営を刑務所に任せたらどうか、という話だった。スタッフの反応は「? ? ?」。


ヨーガンレールの社員食堂

 何が楽しみかって?食べることしかないじゃない。これが、わがナラティブホームの日常会話。そこにポンと出されたのが「ヨーガンレールの社員食堂」(PHP出版)という1冊。ヨーガンレールというのはファッションデザイナーの名前で、わかる人にはすぐにわかる人気デザイナー。彼女が社員食堂といいつつ、自分のために作った天井は高く、白い壁に太陽の光がふりそそぐ別天地の食堂だ。「私は怠け者だから、毎日の食事の事を考えるのは苦手です。けれどへんなものは嫌だから、身体に良いものを、そしてそれがおいしいと感じられるものならば良いと思っています」と、会社の中で一番環境のいい場所に作った。本には1年間の昼食、216日間の料理が写真に素材名を付けて掲載されている。見るだけでも楽しい。

 実は「ものがたりの郷」に入居されている人たちの食事が悩みの種となっている。食事提供は別の会社に依頼しなければならない仕組みになっているのだが、これだけの小人数ではコストが最大のネックだ。朝400円、昼500円、夜600円というのがどこの食堂でも常識だが、これをどう超えるのかだ。難問である。最後の晩餐ではないが、心から「ああ、おいしい」という声を聞きたいというのが願いとなっている。

 誰かポンと出してくれないかね!と、いつもの他力本願のため息で終わってしまうのが、ここの常でもある。


消えていく歴史

 シベリアで抑留生活を経験した94歳のMさんが息を引き取った。男らしいというか、潔いというか、見事な死だった。立ち会ったスタッフの実感である。「やっぱり男にとって軍隊生活って必要じゃない。韓国の男のかっこ良さというのも徴兵制があるからかね」。「もっとゆっくり話を聞きたかったね」。

 Mさんは、家族にもシベリアの話を話さなかったという。戦後、満州から酷寒の地に抑留されたのは60万人。シベリア開発の労働力として、白樺の木々を伐採し、鉄道線路を敷くものだが、黒パンひとつに、薄いスープ一杯で酷使された。6万人が寒さと飢えで亡くなっている。引き揚げてきても、共産思想にかぶれているのではないか、と白眼視された。Mさんもこれはという仕事に就いたのは40歳の時からである。どれほどの悔しい思いがおおいかぶさっていたか。多分、そのことを口にしたら、自分が壊れてしまうのではないか、と思っていたのかも知れない。

 「それでも、いい家族さんだったね」。「孫が病院では見せない笑顔を、この部屋で見せてくれたと喜ばれた時は、うれしかったな」。「庭の盆栽の手入れも好きだったらしいね」。

「でも、胸が張り裂けそうな記憶をしまいこんで、生活されていたと思うと、悲しい気持になるね」。

「平和はだらしない男しか育まんけど、我慢しようよ。でも、シベリアのことは誰も知らないようになるね」。

 tyuripu


大地震

 「ここで地震が起きたら、どうなる。みんな運び出せるかしら?」。スタッフルームの話題もいつしかそんな会話になる。それにしても、とんでもない災害が起きてしまったものだ。死者・行方不明が3万人に達しようとしている。そして、避難所で亡くなる高齢者も数えきれない。地震、津波、原発の放射能漏れ。果たして、この砺波で予想される災害は何か。

まず地震だけど、ここだけは安全ということはないからね。でも「ものがたりの郷」は新築したばかりで耐震構造は万全と聞いているし、火災は最新のスプリンクラーが設置されているから、大事にはいたらないという話よ。それよりも、庄川堤防決壊による洪水の可能性が高いのでは。津波みたいにはならないけど、鉄砲水ということはあるよ。とにかくもの凄い勢いでくるらしい。

ところで誰が一番頼りになるかね。口だけの副理事長はダメね、電話しても二日酔いで出て行けない、ということも考えられるしね。

 「私達に出きることは、きょうの仕事を頑張ることしかないのよね」。それが結論か、もらったケーキがあるから、それを食べてからにしない。

「このダラども!この有事に何のんびりしている。東北のことを考えてみろ!」(副理事長)。


涅槃団子

 お釈迦さんの命日である2月15日に涅槃団子が作られる。お寺の本堂で、お参りに集った善男善女に向けて、袈裟をまとった住職が法事のあとにばら撒く。これを拾って持ち帰り、家族でそれぞれ口にすると、一年の無病息災が約束される。涅槃団子を毛糸にくるんで、子供のランドセルにぶら下げてお守りにする家も多い。

 その涅槃団子が回りに回って、ものがたりの郷談話室にもやってきた。「これはやはり、最も信心深いMさんにおすそ分けしよう」と一致した。ベッドの傍には、名僧の本が必ずある。お寺との関係も大事にされている。病を得ても乱れを見せないのは、そんな信心のお陰かなと思っている。
 「あたわり」というのは富山弁だが、お釈迦さんの教えをよく表現している。運命づけられている、という意味。生もあたわりなら、死もまたあたわり。「なーん、みんなあたわりながやちゃ」としばしば煙に巻いてしまうが、この心地いい響きは、越中真宗門徒のこころの響きといっていい。自分ではどうしようもないことは、悩まずに受け入れてしまう。そして、とにかく前を見る。Mさんの到達したい悟りというのはこんなものかなと想像している。
 焼いたばかりの涅槃団子を口に放り込んで、はたと思う。生まれてくることも、死んでいくことも、自分でままならないのに、他のことが自分の意のままになるわけがない。まさにその通りではないか。われわれも、つまらないことで悩んでいないで、「あたわり」を合言葉に励まないわけにはいかないのだ。

 ところで、「生老病死」「四苦八苦」を講演の枕詞で使うわが理事長は、医師にして仏教信者か否か、今度聞いてみよう。


女性起業家

 見学が絶えない。押しかけ同然であるが、無碍にするわけにはいかない。少しでも医療福祉の向上につながればいい、という理事長方針でもある。
 いま岐阜・白川郷にいるのですが、明日午後に行きたいとメールをして来たのは、熊本の女性起業家である。25歳で地方銀行を辞めて、パソコンスクールを開いた。現在49歳だが、アロマ、気功、断食道場、化粧品開発と次々と展開している。自社ビルを持ち、無借金を貫いている。2月、8月は社長の充電と称して、海外、国内とちょっと気になる情報があれば、自分の眼で確かめに出かけている。ナラティブ情報も、母が目にしていた雑誌で目にして、これは、と思ったらしい。自他共に魔女ということになっている。
 しきりにメモをする。彼女の頭は、自分ならどうする、どの人脈を使うか、ポイントはここだな、と目まぐるしく回転しているのだ。そして、質問してみた。あなたのナラティブホームはどんなものになりますか。
 やはり熊本でやります。まず自分の人脈で医師もいますから、協力してくれる医師を探します。看護も、介護もアロマ人脈で大丈夫。夫が不動産はやっているので、アパート経営に乗り出すところは夫に任せることに。特徴は鍼灸、有機野菜、ヒーリングなどの代替医療をくっつけて、全国から入居者を集めるようにします。現在、南麻布に事務所を持っているし、化粧品の代理店が全国に出来つつあるので、そのネットワークが生きて来る。
果たして数年後、熊本ナラティブホームができているかどうか。楽しみである。


Profile

スタッフがケアや医療についてのこと、日々のこと等を書き綴っています。

Entry
Calender
2025年8月
« 1月  
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

© 2023 Narrative Home.